2012~2013年度でもっともお気に入りのCDアルバム


久々に「これだ!」と思える音楽に出会えた。

 

それがFresh!という日本のバンドの「WHAT ARE YOU DOING IN THIS CONFUSION」というアルバム。

 

WHAT ARE YOU DOING IN THIS CONFUSION (ジャケット新装盤)

WHAT ARE YOU DOING IN THIS CONFUSION (ジャケット新装盤)

 

 

 僕の最も好きなタイプの音楽というのは、次に挙げる条件を限りなく満たすものだ。

 

●次の展開が読めないような、非常にフリーフォームな音楽、もしくは逆に陶酔感を誘発するようなミニマルな音楽。既存のジャンルで言えば、フリージャズの要素とファンクの要素とテクノの要素が入っているもの。

 

●極力情緒性やメロウネス、分かりやすいメロディラインを排した、抽象的で前衛的な音楽表現

 

●フリーフォームとはいえ、行き当たりばったりのフリーセッションで出来上がったような偶発的作品ではなく、基本的な楽曲構成はしっかり練られているもの。

 

●ドラムとベースの音がしっかりと耳に主張してくるもの。

 

●できればリード楽器はギターであって欲しい。そして、あまりディストーションやファズ処理をせず、なおかつ金属音的なノイズをまき散らして欲しい。

 

●できれば、グラインドコアのようなハードコア的ハイスピードの部分も欲しい

 

これらの条件を満たすような音楽というと、やはりポストロックやエクスペリメンタルロックと呼ばれるものになるわけだが、いかんせん、そうしたキーワードで語られるバンドは、いざ聴いてみると、非常にキレイなメロディラインが主軸となっていることが多い。

 

僕が前衛的で刺激的な音楽を聴きたいときは、そこにベタなメロディラインなど求めていないのだ。ベタなメロディが聴きたいのであれば、もっと徹底して“ポップ”にこだわったアーティストはいくらでもいる。

 

また、ジャンクロックと呼ばれるタイプの音楽も、上記条件に近いものなのだが、いかせん今度はドラムやベースがヘナチョコだったり、またギターにやたらとディストーションがかかっていたりで、これもまたちょっと違うのである。

 

そういう意味では現役のフリージャズ系のアーティストが、もっとも上記条件を満たしてくれていることが多い。ただ、ギターの音がフィーチュアされている作品が少なかったり、ベースがウッドベースのため、あまりにも後ろに引っ込みすぎていたり、といった点で、やや不満の残るものも少なくない。

 

これまでで、上記条件をほぼ満たしてくれている音楽の例としては、フレッド・フリス(g)、ビル・ラズウェル(b)、フレッド・メイヤー(ds)のユニット、Massacre(マサカー)が1981年に発表したアルバム「Killing Time」などが非常に好きだった。

 

また、1980年前後のポストパンク、ニューウェーブ華やかなりし頃のパブリック・イメージ・リミテッドやポップ・グループの一連の作品も、僕のオールタイムフェイバリットであった。

 

最近では、ノルウェーのフリージャズギタリスト、ラウル・ビョーケンハイム率いるバンド「Scroch Trio(スコーチ・トリオ)」の作品や、彼がビル・ラズウェル(b)、モーガン・オーギュレン(ds)とのユニットで2011年に発表した「Blixt」というアルバムなんかが、上記条件をかなり満たしてくれるものだった。

 

ところが、2012年、2013年の2年間は、こうした音源に巡りあえず、悶々としていたのだ。

 

しかし、巡り合えなかったのは単なる僕のチェック洩れであった。downyという日本のバンドのドラマーとベーシストが中心となって組まれたユニット、Fresh!が2012年にこんな素晴らしくカッコイイアルバムを出していたのだ。

 

音楽サイトでの同作品の紹介文言を見ても「アヴァンギャルドにフリーキィに炸裂しまくるプログレッシブポストロックサウンド!ジャズやファンクをも呑み込んだ怒濤の情報量と緊張感、そして攻撃的な演奏」と、僕の琴線に触れるキーワードだらけではないか。実際聴いてみて、「キタ、これ!」と心のなかで叫んでしまった。

 

アルバム中、ほんの数カ所ではあるが、このテの音楽では一切排して欲しかった“分かりやすいメロディライン”が入ってくるところもあるが、アルバム全体のクオリティからすれば十分目をつぶれる範囲内。

 

また、「現代版キング・クリムゾンもしくはヘンリーカウ」と言ってしまえなくもないのだが、しかしクリムゾンはいかせん、アルバムに必ず2、3曲入っている情緒的ボーカルナンバーが邪魔だ。また、クリムゾンやヘンリーカウ、ソフト・マシーンといった僕の好きなプログレ勢と比べると、このアルバムにはブラストビートのような高速ドラミングを聴かせてくれる箇所があり、その分、僕はFreah!の方が断然好みである。

 

いやぁ~、これで当面は、僕の“刺激的でアヴァンギャルドなロック欲求”が満たされた状態で日々を過ごせるというもの。

 

ところで、僕はこんな音楽ばかり聴いているわけではなく、むしろ、非常にポップなものを聴く頻度の方が高かったりする。

 

ただ、たとえば、「甘酸っぱいメロディーのキラキラポップチューンが聴きたい」と思った時などは、ちょっと音楽情報サイトを調べて、youtubeなどでチェックすれば、イギリスやアメリカ、そして日本の、そうした楽曲がいとも簡単に聴けてしまう。特に最近は日本のそのテの音楽のクオリティの高さには目を見張るものがあり、“ポップな音楽”はネット上に溢れかえっている状態だ。

 

だから、“ポップなサウンドが聴きたい”という欲求の方は、渇望することがないのである。

 

ちなみに、最近ではやはり「禁断の多数決」の、あの“どこかで聴いたことのあるようなメロディ”のキラキラポップワールドが素晴らしいと思う。

 

また、ポップなメロディラインで、なおかつハッドエッジなギターサウンドも味わえるロックや、サイケでドリーミーなポップ・ミュージックなども、英米日の若手バンドには溢れかえっている。

 

ただ、これは中年オヤジの悪いクセなのだが、ポップなメロディラインがウリのロックを聴いていると結局「ああ、ビートルズホワイトアルバムTレックスを聴けば十分だな」と、そしてドリーミーなサイケ・ポップを聴いていると「ああ、ビートルズのサージェント・ペパーズやビーチボーイズのサンフラワーあたりを聴けば十分だな」と思ってしまい、あまり現在進行形のアーティストを聴く必要性が感じられなくなってしまうのだ。